世の中にはたくさんの種類の創作物があります。
「モノラボ」では主に「小説」を中心にした記事を投稿しているのですが、数ある創作の中でも、「小説」はその良し悪しが一目で判別しづらい媒体です。
この「良し悪しの判別が難しい」ということは、創作を行う上で実はとても大切なことです。
作品や技術的な部分に対して、「ここが悪い」や「この部分が良い」ということがはっきりと分からないと、効率的に成長することができません。
それでは、「小説はどのような作品が良いとされているのか?」ということについて、この記事では考えていきましょう。
最後までご覧いただければ幸いです。
この記事はこんな人におすすめ
- 小説を書き出してまだ日が浅い人
- 良い小説がどんなものかわからない人
- 自分の小説のどこを改善したら良いのかわからない人
良い小説の条件とは?
「良い小説」と題した記事なのですが、結論から言うと小説というものは、ひと目見ただけで良し悪しを正確に判断することが難しいジャンルの創作です。
その具体的な理由というものは下記のようなものがあります。
書き手によって文章とそれを解釈する場合で多様な見方ができる
日常的に使っているものであるため、良し悪しの判断が難しい
分量そのものが多い場合が多く、作品を見るのに時間がかかる
もちろん、上記以外にも様々な理由がありますが、一貫して言えることとして、「素人目ではなかなか判断がつかない」という部分が大切です。
これは実は深刻な問題であり、「具体的に改善するべき点が分かりづらい」という、上達するうえで大きな問題があります。
このため、小説の上達は、漫画やイラストなど、視覚的な創作よりも調達が難しい傾向にあるかもしれません。
実際、上達のためには、「どのようなものが良い小説なのか?」というものの具体例を見てトライアンドエラーを繰り返すのが一番です。
それがなかなかできないということは、小説が如何に創作として難しいのかがわかるはずです。
小説の上達を考えるうえで、良い小説という要素について、この記事では下記の項目から考えていきます。
- スムーズに読み進めることができる
- 状況をリアルに感じる事ができる
- 一度の読了で物語の全容を理解することができる
- 物語と文体が合っている
- 自分が読んで「素晴らしい」と思う作品である
それでは一つずつ見ていきましょう。
1.スムーズに読み進めることができる
良い小説の条件として、「スムーズに読み進めることができる」というものは、もはや代名詞的な特徴と言えるかもしれません。
小説は創作物の中で最も「受け取りに負担がかかる」ものです。
そのため、どれだけ読み手の負担を減らして、スムーズに情報を伝えることができるのか、という部分が大切になってきます。
小説は大きく分けて、下記のような要素があります。
- 物語そのものの本筋
- 物語を構成するキャラクター
- 物語の舞台となる世界観や描写
- 文章外の描写
これだけの要素を「文章」のみで表現されているため、とにかくスムーズに読ませるための工夫が最優先で必要になります。
文章は基本的に視覚から入る見た目の情報は、ある程度似通っています。
文字そのものは記号的ですから、「意味を振り返って考える」という考えのプロセスが必要になります。
このようなことから、小説には素晴らしい文才と同時に、それを最後まで読ませる工夫も必要になります。
具体的には下記のような工夫ができるでしょう。
難しい言葉を使わず、日常的に使用する表現を中心に書く
想像がしやすいように状況描写から書いていく
キャラクターを想像させやすいように個性的なキャラ付けをする
もちろんできることはこれだけではありません。
むしろ小説というものは、如何にこのような工夫を凝らして物語を作っていくのかが一つの評価軸になるかもしれません。
小説において必要なのは、作品を最後まで理解させるための工夫であると言えるかもしれません。
そのようなことから、一本の小説をスムーズに、ほとんど止まることなく読むことができるというのは、それだけでその作品が優れているということなのでしょう。
2.状況をリアルに感じさせることができる。
次に「状況をリアルに感じることができる」ということも外せない要素でしょう。
何度も書いていますが、小説は「文章のみ」であらゆるものを表現します。
そのため、その時の状況や文脈だけではなく、登場人物たちが体験している感情すらも追体験できるものです。
もちろん、この「文章のみで表現されている」というところはメリットにも、デメリットにもなり得ます。
具体的には下記のようなものが考えられます。
メリット
- 視覚的な表現がなく相手の想像力を引き出すことができる
- 人の心理や感情の表現で感情移入させやすい
- 文章特有の表現をすることができる(叙述トリックなど)
デメリット
- 文章を読むことそのものが読者の負担になる
- 物語の理解には読者の読解力が必要になる場合がある
- 没入感を抱かせるまでに飽きてしまう可能性がある
- 非日常的な描写は想像させることが難しい場面がある
それぞれ良い悪いを上手に物語へ落とし込みながら作品を仕上げていくわけです。
ですがこのデメリットになっている部分は、作者がはっきりと自覚したうえで創意工夫をしていくことが必須になります。
そこで、表現されている場面をリアルに感じることができるかという指標で考えてみると分かりやすいかもしれません。
前述のデメリットは、「文章に没入する前に、その場面を感じさせることが難しい」と言い換えることができます。
ここをなくすためにも、まっさらな状態で作品を見てみて、「書かれている情景がスムーズに入ってくるか」を考えてみましょう。
もし仮に、その作品が小説として優れているのであれば、物語を読み始めた後、スムーズに頭の中で情景が浮かび上がるはずです。
このような作品は、作者が小説という媒体のメリットとデメリットをしっかりと理解したうえで作品づくりをしている場合が多いです。
そのため、主観として「この作者の作品はどれも情景が分かりやすい」という作品は、読みやすさに優れ、創意工夫もなされた作品に仕上がっていると判断して良いでしょう。
しかしながら、「情景の浮かびやすさ」というものは人によってかなりムラがあります。
誰もが自分のみ知った情景や光景ほど浮かびやすく、また逆に情景を浮かばせることが難しい人もいます。
それに加えて、最近ではメディアミックスによって、小説という媒体以外で作品が展開されていることもあります。
代表的なメディアミックスは下記のようなものがあるでしょう。
- 映画
- マンガ
- 舞台
- ドラマ(ドラマCD)
これらの要素によって、文章以外からイメージがある場合は、文章のみでイメージすることが難しくなります。
作品としてはそれでよいのですが、小説単体として見るとまたイメージが変わってきます。
良い作品、悪い作品という、技術的な側面で小説を考える場合は、このメディアミックスによるイメージを加味して考える必要があります。
あくまでも「まっさらな視点から情景のイメージができるか?」ということが大切になります。
3.一度の読了で物語の全容を理解することができる
次に、「一度の読了で物語の全容を理解することができる」ということです。
当たり前のような話ですが、一読するだけで物語の全容を把握できることはもはや前提です。
しかしながら、小説は文章のみという形式の都合、極端に複雑な作品を仕上げることは難しい傾向にあります。
もちろん、作者の技量的な部分も問題になるのですが、小説は他の形式の創作物と比べても特に「読み手を選ぶもの」だからです。
前項でも書いているのですが、「小説は読み手のイメージに依存する」という特徴があります。
このことから、実際に文章を噛み砕いて理解し、想像するのは読み手になります。
このため、物語を一通り読んで理解するためには、読み手にも一定レベルの知識や想像力を求めることになります。
これ以外にも、小説において物語をすべて理解させることの難しさは下記のようなことが考えられます。
頭の中の想像力で情報を整理する必要がある
文章による細かなディティールは流し読みされてしまう可能性がある
作者と読者の間で、極端な語彙イメージにズレがあると物語が正しく伝わらない
長編であればあるほど、長期的な文章読解力が必要になり、作者とズレが生まれやすい
上記のような理由から、小説において、物語を一本筋で伝えることは難しいと言えます。
これらは前述の「小説特有のデメリット」でもあるわけなのですが、当然作者はこれも考えたうえで物語を作ります。
そこでもまた創意工夫というものがあります。
それによって、作者と読み手の間にある「イメージの差」を埋めていき、自分が思っている物語を相手に伝えることが小説家になるでしょう。
そのため、物語を一読して、物語の全容をつかめる作品というものは、それらの創意工夫がしっかりなされている作品である可能性が高いと言えます。
4.物語と文体が合っている
次に「物語と文体が合っている」ことです。
良い作品というものは調和が取れているものです。小説は文章ですから、意外にも作者のクセや雰囲気というものが如実に現れるものです。
具体的に文章の雰囲気は、下記の要素が上げられます。
- 使っている語彙
- 漢字やひらがな、カタカナのバランス
- 文章の視点(一人称・三人称・神視点)
- 改行のバランス
- 文学性(美しさを意識しているか否か)
- エンタメ性(分かりやすさを意識しているか否か)
代表的なところを列挙するだけでも、文章の印象を左右するものは意外に多くあります。
小説はこれらの要素を上手につかって、その作者の持っている独特な雰囲気を言葉の外側で表現します。
もちろん、作者が自分独自の雰囲気を作るのは素晴らしいことなのですが、それが効果的なのは「物語と合っている場合」です。
表現されているストーリーと、文章の空気感というものは、お互いがお互いへ影響します。
作者が物語を作るときもそうなのですが、読み手が作品を読む時にもその影響は強いと言えるでしょう。
読み手は作品の物語も重視していますが、「文章の雰囲気」によって作者との相性を考える人もいるかも知れません。
どれだけ素晴らしい作品であったとしても、作者との相性、ひいては文章の相性が合っていなければ、作品を十分に楽しむことはできないかもしれません。
物語は大まかな方向性として「ジャンル」があります。
恋愛やホラー、SFなど、読者が作品を探す時に代表的な考え方になるでしょう。
作品を作るときには、自分が作りたい作品のイメージをなんとなくでも決めておき、それに合わせるような文章を模索することが大切です。
物語と文体の不和というものは、想像以上に読み手の作品に対する印象を歪めてしまいます。
例えば、「人を笑わせることが好きな主人公が、意中の相手を振り向かせるために展開されるラブコメ」という物語があったとし、堅苦しい文章で物語を展開されたらどうでしょうか?
これは完全に、物語と文体に不和が生じています。
物語にはしっかり、それに合った文章を書いていくことはとても大切になります。
逆に良い作品というものは、この作品を上手に調和させているものがほとんどです。
文章の技工だけではなく、物語の雰囲気まで統一し、読み手を物語の世界へ導くことができている作品は、間違いなく素晴らしい作品でしょう。
5.自分が読んで「素晴らしい」と思う作品である
最後に、「自分が読んでいて、素晴らしいと思える作品」であるということです。
ここまでの記事の中で、「良い小説」をできるだけ客観的な形で考えてきました。
ですが、前項にてあったように、小説における良し悪しというものは、他の媒体の創作物と比較しても「好み」の影響が強く出ます。
いくら作品として優れたものだからといって、その作品が「どのような物語で」、「どのような文章で」、「どのような言葉で説明されているか」というものはすべて好みで変わります。
これは良い意味で、「作品は自由なものである」ということを指しています。
しかし悪い意味では、「どうやっても自分の作品が受け入れられない人もいる」ということでもあります。
創作は本来、自分が楽しいと思うからするものです。
それを展開していくことには相応の覚悟と、精神的な負担があります。
そんな中で、「自分の作品が良いのか?」と悩むことはきっと多いかもしれません。
そんな方に対して、この最後の項目が大切になります。
小説は自由です。だからこそ、最低限の評価軸さえ整っていれば、あとは自由なのです。
突き詰めていけば、最終的に「自分が好きな作品が一番素晴らしい作品」ということにもなります。
このため、主観として「この作品は〇〇が最高だから素晴らしい作品だ」という考えもできるわけです。
小説の世界、というよりアート的な世界は絶対的な才能というものを定義することが難しい世界です。
だからこそ、作品で成功するということは、本人の実力と時の運の要素があります。
その中で、作品を練り上げ、作品を発表するのはとても高い壁になります。
そこを動かすのは、「好きだから作品を作る」ということです。
最終的にはその主観を信じて作品を楽しむことができれば最良となります。
これは世に出回っている作品も同じです。素晴らしい作品は「多くの人の好き」によってその評価を受けています。
読み手である、貴方自身が良い作品こそが、その作品の「良さ」担っているのでしょう。
まとめ
この記事では「良い小説とはなにか?」と題しまして、様々な方向から考えていきました。
まとめると以下になります。
今日のまとめ
- スムーズに読み進めることができる
- 状況をリアルに感じる事ができる
- 一度の読了で物語の全容を理解することができる
- 物語と文体が合っている
- 自分が読んで「素晴らしい」と思う作品である
小説は本来自由なもの、なにかノウハウが確立しているのであれば、皆がベストセラー作家になれています。
だからこそ、各々の「好き」が誰かの「新しい好き」になっていくのでしょう。
筆者も含めて、これからも誰かの好きになれる作家が一人でも現れることを願っております。
ここまで御覧頂いた方は誠にありがとうございました。